
- 生産国
- 日本
- 生産地方
- 鹿児島
- 分類
- 焼酎
- タイプ
- 芋焼酎
- 主原料
- さつまいも
富乃宝山は芋焼酎です。一般的な芋焼酎をイメージすると、まず芋特有の香りが思い出されると思いますが、富乃宝山はそのイメージを捨てさせます。
まず、芋焼酎特有の香りではなく、みずみずしいグレープフルーツのような、フルーティな爽やかさを感じます。口当たりは滑らかで、甘く、芳醇です。
焼酎が苦手な人にこそ、ぜひ飲んでいただきたい一品です。
蔵元の西酒造は、富乃宝山をオシャレに楽しめる焼酎として世間に提案しました。その考えは見事にヒットし、芋焼酎のイメージを180度変えるとともに、焼酎ブームの火付け役の一つになりました。
西酒造がこだわりを持っているのは、原材料の芋、米麹、そして水です。原材料の芋は「黄金千貫」という品種で、もともとはデンプンの材料として栽培されていたものでした。この豊富なデンプン質が芋焼酎には適しているのです。
西酒造で使われる「黄金千貫」は、すべて鹿児島県内の契約農家で栽培されたものだけです。それを細かく選別し、必要ない経た部分などを落として、痛みのない新鮮なものだけを使用します。
次に米麹ですが、富乃宝山には黄麹と呼ばれる菌が使用されています。この黄麹菌、なんと清酒の製造に使われるものです。一般的な焼酎に使われる麹菌は白麹菌で、これらはまったく別の菌種なのです。
この麹菌を作るために、焼酎蔵としては珍しく米蔵に玄米を備蓄し、温度管理しています。麹米として一度に使用する分をそのつど精米するのです。
最後に水です。使用するのはもちろん、地元鹿児島の天然水です。
鹿児島県の大部分はシラス台地になっているため、降った雨水がすぐに地下に浸透します。このとき、軽石、火山礫層、シラス層といった独特の折り重なった地層が天然のろ過装置になるのです。
さらに、そこには多くのミネラル分が含まれており、それが地下水に染み出して、焼酎作りに重要な役割を果たすのです。
芋も米も水も、すべては大地から生まれるもの。それをないがしろにしてはいけない、というのが西酒造の理念になっています。と、同時に、焼酎の門戸を広く開けるため、吟味蔵を設けるなど新たな試みも行なっています。
富乃宝山の爽やかな香りと滑らかな口当たりは、この伝統と改革の間で生まれるべくして生まれたものといえるでしょう。
ただ、芋焼酎らしさを求めるならば富乃宝山は適していません。また、独特の香りがお湯割に合っていないため、楽しむときはロックやストーレートをお勧めします。
まだ芋焼酎を飲んだことがない人、芋焼酎によい印象を持っていない人にこそ勧めたい焼酎です。芋焼酎のイメージががらりと変わって、焼酎の世界から出られなくなってしまうかもしれません。